見えた先はまだ先だった

8月中に終わるかと思われた伐採作業は、今週のしつこい雨に遮られて来週まで持ち越しです。それにしても、残る木はあと4本なのです。胸高以上の高さの木は870本もあったのに。今回の伐採実験は、森の基礎データをとるためのものなので、自分のデータにはならないけれども、意外なほど大きな経験を得ることができたので、作業が終わってしまうのがちょっと寂しい。

不都合な真実

アル・ゴア不都合な真実をようやく見た。ゴアのプレゼンテーションは本当に上手で、うっかり丸め込まれそうになってしまった。もちろん重要な、傾聴すべきメッセージは受け入れるけれども、いくつか気になる点があった。

・O教授の頻出発言の一つに、「相関関係があるからといって因果関係があるとはかぎらへん」というのがありますが、ゴアのロジックは全て相関関係のみに依存している。例えば、ゴアはここ数十年で劇的にCO2排出量が増加し、同時に気温・海水温も上昇しているので、気温・海水温上昇の原因はCO2排出量の増加にある、と主張しているけれど、気温・海水温とCO2排出量の変動は、単に挙動が同じなだけで、原因結果の関係にはないのかもしれない。かといって、地球で操作実験をして因果関係の有無を確かめるわけにはいかないので、せめてこういう場合は対立仮説をきちんと挙げて対立仮説を棄却するべきだと思う。

・複数の要因によって決定されていると思われるものを、あたかも主要因は一つ(つまりCO2排出量の増加)であるかのような宗教臭い演出が頻出する。例えば、近年ハリケーンや台風の被害が増加しているのは、個々のハリケーンなどの威力が昔に比べると大きくなったからで、それを引き起こしているのは海水温の上昇である、ということをゴアは言っている。確かに大きな台風というものは、大きな被害の一要因にはなりうるけれども、それ以外にも人口の都市集中などの理由も十分に考えられる。複数の要因によってコントロールされている問題を解決するためには、それぞれの原因にあたらなければならない。いくら地球温暖化に警鐘をならしたいという意図で作られた映画であったとしても、問題の解決を妨げるような民意を導くようなプレゼンテーションは良くないと思う。

地球温暖化の悪影響について検証した研究について報告した科学論文1000報のうち、悪影響を否定しているものは1つもない、と言っている。でも、そもそも現代の科学の検証法は肯定することを前提にしていて、実験の結果は、仮説を肯定できたか、肯定できなかったかの二つしかない。ネガティブデータの悪疫に犯されたら身にしみて良くわかるけれども、肯定できなかったことを理由として否定するためには、膨大な理論武装(あるいはファンタジー)が必要で、そもそも地球温暖化などを題材にして研究する人は、地球温暖化が悪であるほうが社会的・金銭的に便利なので、そんな面倒なことはしないだろう。

・個人の日常でのCO2排出の抑制も呼びかけているけれども、これがどれほど効果的なのか甚だ疑問です。ゴアは、CO2排出量は、指数関数的に増加していて、これは、人間活動による直接的なCO2排出量の増加がトリガーとなって気温・海水温の上昇を引き起こし、メタンハイドレードの融解や山火事を促進させているからだと主張する。そして、現在の増加した大気中のCO2の半分以上は、メタンハイドレードや山火事に起源すると言っている。確かに、人間による化石燃料の使用などがトリガーになったのかもしれないけれども、効果的にCO2の排出を減らしたいのなら、メタンハイドレードの融解を止め、山火事を抑える努力をしなくちゃいけない。その点に関して、私たち個人の日常生活での努力は全く無力です。私たちがペットボトルをリサイクルしたり電車に乗るようにいくら心がけても、山火事は減らない。まあ、やらないよりはやった方がましかもしれないし、化石燃料を巡る危機を回避するためには有効なのかもしれないけど、それはまた別の問題だ。

ここまでが、ネガティブな意見。

この映画で最も評価したいのは、地球温暖化問題を解決するために、日常生活での努力だけでなく、政治への参加を呼びかけている点だ。ゴアは、地球温暖化の加速を緩めるために私たちが出来る行動として具体的にいくつか挙げていて、そのなかで、「この危機の解決に取り組むと公約している議員に投票しましょう。」「議会に手紙を書きましょう。もし話を聞いてもらえなければ、自分で立候補しましょう。」と言っている。メタンハイドレードの融解や山火事を抑えるには、国家・地方自治体・大企業レベルで対応するしかない。だから、温暖化問題を解決するために問題意識を持った人に立候補を呼びかける、という行動は、実際最も効果的な活動だと思う。この視点は、お上は雲の上の存在だと思いがちな私たち日本人には非常に重要で、なぜなら、個は公であるという認識を広めることが様々な社会問題を解決する糸口になるからです。

ムヨウラン出茎

一週間以上前から、ムヨウランが出茎し、ぐんぐんのびて、大きなもので今は17cmになっています。今週末には花も咲き始めることでしょう。現在、ムヨウランのフェノロジーの調査を行っています。その一環で、30×30mのプロットを作り、個体のマッピングをしているのですが、昨年出ていなかったところからも20個体弱出てきています。このエリアでは、ムヨウランは増加していっているようです。なにが原因なんでしょうね。

皆伐実験の作業も、ぼちぼちですが進んでいます。先週末から本格的に伐採作業に入りました。が、サンプルを取りながらの伐採なので遅々として進みません。今月中に高木以外は伐採しないといかんのだけど。学生さん達にがんばってもらわねばなりません。

伐採区・対象区全天写真


今日は、県大の大塚君と伐採区・対象区の全天写真を撮りました。無事終わりました。
森の中で、訪花昆虫(環ソの山田君)とクモ(京大の名前失念君)を求めている、二個体の徘徊性学生を目撃しました。ピットフォールに落ちないようにね。
明日、5/5は大萱の萱野神社のお祭りです。

ムヨウランの開花状況:地上部はまだ確認できず。

非伐採対象区毎木調査

 今日参加してくれたのは、環ソの中山君・西澤君・立山君です。相変わらずの毎木調査ですが、あと2/5を残すのみになりました。隣の伐採区では、県大の野間先生のグループが下層植生の調査をしていました。

ムヨウランの開花状況:地上部はまだ確認できず。